言葉ごときでは表せない二人の関係 – 凪良ゆう「流浪の月」

今回は、2020年本屋大賞受賞作である凪良ゆうさんの「流浪の月」について紹介します。

流浪の月

この著者の作品は初めて読んだのですがとても好きな書き方だったので他の作品も読んでみたくなりました。かなり読みやすいので本をあまり読んだことのない人にもオススメです。

あらすじ

小学生の家内更紗(かないさらさ)は、縛られることを嫌いルールに囚われることのない自由な暮らしをする母とその母を愛する寛容な父の3人で幸せな家庭のなかで暮らしていた。更紗も母のように自由で周りに囚われることがない生活を父のような人と結婚して気づいていきたいと願っていた。

父の死をきっかけに1年後に母も失踪し祖母のもとに送られることになった更紗。そこでの生活は母が嫌っていたルールに囲まれた生活でそれに加えて祖母夫婦の実子による性加害により更紗の心は疲弊していった。

家に帰りたくない更紗が友達と遊んだ後に家に帰らずに雨が降る公園で本を読んでいると、目の前に大学生の佐伯文(さえきふみ)が現れ、「うちくる?」と更紗に尋ねた。

更紗はそれにうなずき、文の家についていって更紗は文の家で生活するようになる。

文との生活の中で再び両親暮らしていたときのようなルールのない自由な生活、そして文という両親以外でできた唯一のありのままの自分を受け入れてくれる存在ができた更紗でだったが、文と動物園にいった時に文は更紗を誘拐した罪で逮捕されてしまい二人は離れ離れになってしまう。

その後、更紗は社会人となり結婚を目前にした彼氏と同棲していたが文のことを忘れることができず今の彼氏と結婚してもいいのかと悩んでいた。そんな中、仕事仲間に連れられていった喫茶店で15年の時を経て文と偶然出会ってしまう。

流浪の月の感想

ここから下は軽いネタバレがあるのでネタバレが嫌な方は飛ばしてください!!

この物語は本当に更紗と文の関係性に切なくなったり、泣かされたり感情が揺さぶられました。

更紗の人生と文の人生の中でお互いが互いの将来がより良いものになって欲しいと願う気持ちがありながらも一度あってしまったらまた会いたくなってしまう気持ちもどの気持ちをとっても更紗と文がかけがえにない二人なんだと感じさせられます。

「愛情」でも「恋」でもないが「この人でないとダメ」と思えるこの文と更紗の関係はなんと表現すればいいのでしょうか。。。。

更紗が言った「事実として知ってる」という言葉がこの物語の全てだと感じました。世間では幼児性向を持った誘拐犯の文とその誘拐に巻き込まれた傷のついた被害者の更紗という認識ですが、事実としての文と更紗はそのような関係性ではないということを更紗と文は知っています。

加害者が悪で被害者が善なんて世間が決めた価値観であり、その当事者には違う見え方がしていて誰にもその「真実」が伝わることはないとこの物語を読んで痛感しました。

更紗と文が世間からの好奇や哀れみの視線を受けてでも生きていける理由には感動でも悲観でもない涙が流れました。

この作品が好きな方におすすめな作品

この作品を好きなひとにオススメしたいのが「神様のボート」という作品です。

この作品では、「絶対に葉子を探し出す」という言葉を信じて大好きな人を待ち続ける妻・葉子とその娘・草子の話なのですが、恋愛という狂気による異常ともいえる行為を当事者視点で書くことでそれを普通に思わせる表現の仕方が「流浪の月」の視点と近いものを感じました。

この作品も「流浪の月」と同様にかなり読みやすい作品なのでぜひ読んでみて欲しいと思いました。

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